うえぽんSW局

古いタイプの日記ブログです。気まぐれに更新してます。

2013年03月

 『ちぐはぐな部品』(星新一)を読了。

ちぐはぐな部品 (角川文庫)
星 新一
角川書店
2006-06-24



 というわけで、一編を1ページ漫画化。

【コミPo】「名判決」


 かねてより「三方一両損」は一両出す人が一番損をしていると思てったが、それを説明するのに絶好のショートショートだと思う。

●一行説明
 収録作品数は30編。各作品をネタバレを回避しつつ25文字以内で説明してみました。
 ちなみに、この一行説明は、要約というよりも、挿絵を描く感覚で書いてます。星新一は挿絵への注文として「結末を割らないこと」というのを第一にしていたようです。

 「いじわるな星」:惑星基地建設の隊員たちが豪華料理などの幻覚をみる
 「万能スパイ用品」:ただのカメラではない品を上司から支給される
 「陰謀」:ハトたちがゾウをやっつけるため陰謀計画を立てる
 「歓迎ぜめ」:地球人をもてなすためかダンゴを置いていく住民たち
 「接着剤」:有効時間のある接着剤
 「なぞの贈り物」:押入れを開けると服や食事が出てくる
 「飲みますか」:ちょうど完成した新薬を強盗にすすめる博士
 「廃屋」:落ち武者が住み着いていた家をブルドーザーで壊す
 「宝島」:流れてきたビンに入っていた宝島の地図
 「名判決」:三方一両損の名判決を知り、一両くすねようとする二人
 「魔神」:持って来るのが専門の魔神
 「凍った時間」:サイボーグのムント以外の人々が突然倒れる
 「みやげの品」:観光地でクマに襲われる
 「シャーロック・ホームズの内幕」:ジョン・クレーという貴族がホームズに相談
 「夜の音」:ノックの音がするが誰もいない
 「変な侵入者」:つるつるしているロボットに付き纏われる
 「恋がいっぱい」:幻覚剤を飲んだキューピットが騒ぎを起こす
 「足あとのなぞ」:雪の上についた泥棒の足あとが途中で消える
 「抑制心」:道に落ちている銀貨や、皿の最後のお菓子を思う心境
 「みごとな効果」:ほれ薬を博士から奪い飲んで逃げる
 「神」:神に関わる情報を世界中から集めコンピュータに蓄積
 「最高の悪事」:犯罪組織の首領が、最高の悪事を計画する
 「ネチラタ事件」:ネチラタ菌によって人々の言葉つきがぞんざいになる
 「ヘビとロケット」:対象の星に人が暮らせるか調査するためヘビを送る
 「鬼」:鬼の国では犯罪者は死刑だが、鬼の王様が内緒で逃がす
 「取立て」:借金の元金だけで、利息は払おうとしない男
 「救世主」:ケンタウルスからのケンタウルスに占領された地球
 「出入りする客」:近所の質屋から出てくる客が、入った時と別人に見える
 「災害」:週刊誌の間から妖精とでも悪魔とでもいったものが出現
 「壁の穴」:謎のナイフで壁に穴をあけると様々な光景

【新旧】
 以前のきまぐれロボットもそうでしたが、これも新装版と古い方があります。
 挿絵的には古い方がおすすめ。
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 『富豪刑事』(筒井康隆)を読了。
 中編の連作小説なので、今回は1ページ漫画はなし。

富豪刑事 (新潮文庫)
筒井 康隆
新潮社
2011-06-01



 主人公は大富豪の刑事。単にお金持ちというわけではなく、そのお金持ち設定を活かして事件を解決するというミステリー小説。全四話で各話ごとにお金持ちの活かし方が違い趣向が凝らされてる。

 ミステリー小説はあまり読まないのでミステリーの部分についてはどうこう言えませんが、技巧が凝らされているのは分かります。その技巧がなかなか面白い。

 例えば、最初の話『富豪刑事の囮』では、映画でいうところのクロスカッティング(wikipedia)のような技法が使われてます。小説ではシーンの切り替えは一行空けて書くのが通常ですが、『富豪刑事の囮』では行を空けることなくシーンがどんどん切り替えられます。最終的には4人の容疑者が完全に同じ行動を取らされるのですが、一行ごとに切り替えることで4人の行動が完全にオーバーラップしています。

 他にも、時系列シャッフルなんてこともやってます。これによって、時系列順に読むか、ネタバレになるシーンを後回し読むか選べるようになってます。ミステリー小説として読みたい人は、バレを後回しにして読めばいいわけです。
 漫画のコマ割りで例えるとこんな感じ。

時系列シャッフル


 こういう時系列シャッフルは、今なら主人公にタイムリープ能力を持たせ、バレになる要素を読者から遠ざけるだろうな、と思ったが、よくよく考えたら筒井康隆は『時をかける少女』を書いた人ですね。おみそれしました。

 ちなみに自分は見たことないが、テレビドラマ化もされているそうな。小説版では男性だった主人公が、テレビドラマ版では女性(深田恭子)に変更されているとか。

富豪刑事デラックス DVD-BOX
夏八木勲
ワーナー・ホーム・ビデオ
2006-10-06

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 一カ月ぶりですが、『きまぐれロボット』(星新一)を読了。

きまぐれロボット (角川文庫)
星 新一
角川書店
2006-01-25



 というわけで中から1編を1ページ漫画化してみました。

【コミPo】「とりひき」


 この「とりひき」は新潮文庫の『だれかさんの悪夢』にも掲載されています。
 最後の「キカイ相手に賭け事するなんて嫌だ」といった感じのセリフに共感するところがあるので、この話を選びました。

●朝日新聞連載
 『きまぐれロボット』に収録作品のほとんどは、朝日新聞の日曜版に掲載されたものだそうです。
 というわけで、公式サイトの初出リストを元に一覧にしてみました。
【朝日新聞連載分】
1964年11月01日(日) ◇新発明のマクラ ※初出は「夏休み」信濃教育会編(1961年5月20日)
1964年11月15日(日) ◇きまぐれロボット
1964年11月29日(日) ◇九官鳥作戦
1964年12月13日(日) ◇災難
1964年12月27日(日) ◇悪魔
1965年01月31日(日) ◇試作品
1965年01月17日(日) ◇薬のききめ
1965年02月14日(日) ◇博士とロボット
1965年02月28日(日) ◇便利な草花
1965年03月14日(日) ◇夜の事件
1965年03月28日(日) ◇地球のみなさん
1965年04月11日(日) ◇ラッパの音
1965年04月25日(日) ◇おみやげ
1965年05月09日(日) ◇夢のお告げ
1965年05月23日(日) ◇失敗
1965年06月06日(日) ◇目薬
1965年06月20日(日) ◇リオン
1965年07月04日(日) ◇ボウシ
1965年07月18日(日) ◇金色の海草
1965年08月08日(日) ◇盗んだ書類
1965年08月29日(日) ◇薬と夢
1965年09月19日(日) ◇なぞのロボット
1965年10月03日(日) ◇へんな薬
1965年10月17日(日) ◇サーカスの秘密
1965年10月31日(日) ◇鳥の歌
1965年11月21日(日) ◇火の用心
1965年12月05日(日) ◇スピード時代
1965年12月19日(日) ◇キツツキ計画
1966年01月23日(日) ◇とりひき ※掲載時タイトルは“プレゼント”
1966年02月20日(日) ◇ユキコちゃんのしかえし
1966年03月13日(日) ◇ふしぎな放送

【その他】
◇ネコ--ネコとカード星人「鉄腕アトムクラブ」1964年9月第2号
◇花とひみつ--『花とひみつ』私家版(1964年刊)
◇へんな怪獣--宇宙人のおくりもの「中日新聞」1967年1月3日
◇鏡のなかの犬--「小学二年生」1961年10月号
◇あーん。あーん--「ディズニーの国」1963年10月号


 日曜版なので当たり前ですが全部日曜日。隔週での連載だったようです。
 1964年というと東京オリンピックが開催されたころです。

●意外と薄い
 実際に書籍を手に取ってみれば分かりますが、『きまぐれロボット』は収録作品数の割に、かなり薄いです。新聞掲載のためにページ数が制限されていたためだと思います。
 で、このページ数の少なさのせいかもしれませんが、どうも他の星作品となんとなく違います。
 この違いをドラえもんで例えると、普段は10ページぐらいあるのに、たまに4ページとか6ページになった感じと言ったら分かる人には分かるでしょうか。
ドラえもん6ページ

 いつもはアイテムや事象についてSF的な説明がつけられているのに、今回はそれがないので少し物足りない感じがしました。

●旧装版
 自分が買ったのは下の画像の旧装版の方です。こちらは表紙と挿絵が和田誠なので、わざわざこちらを選んで買いました。
きまぐれロボット旧表紙

 星新一といえば挿絵紙は真鍋博か和田誠です。星新一もエッセイでいつもこの二人に頼んでいたと語っています。
 今売ってる『きまぐれロボット』は別の人が挿絵を描いているので、もしこだわりがあるのなら旧装版の方を選ぶと良いと思います。




【余談】
 「治療」(『宇宙のあいさつ』収録 )という作品にて、コンピュータで平均人間を作りだし、それと対話させることで、精神的な病を治すという装置が出てきましたが、最近それに似たようなものがニュースになってました。
 時事ドットコム:「自分は優秀」錯覚の仕組み解明=抑うつ症状の診断に期待-放医研など
 「自分は平均より優れている」と思う心の錯覚はなぜ生じるのか -脳内の生物学的仕組みを世界で初めて発見-
 どうやら正常な人には「自分は平均より優れている」という思い込み(優越の錯覚)があるらしく、もしその錯覚がない場合は抑うつ症状かもしれないので症状を発見する目安になるかもしれないという研究らしい。
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