kindleでセールしていたので読んでみました(通常価格でも紙本よりずっと安いようです)。

手塚治虫のマンガの描き方
手塚治虫
手塚プロダクション
2016-02-05



 『手塚治虫のマンガの描き方』は今から約40年前の昭和52年(1977年)に初心者向けとして書かれた本です。
 デジタルが主流の現代ではGペンやホワイトを使って描く方法は古くなったかもしれませんが、その部分は歴史的資料として読むと良いかもしれません。
 それ以外の部分も読み物として面白いです。

 下の画像のフキツケは『アオイホノオ』(島本和彦)の主人公も同じことをやってました。
『手塚治虫のマンガの描き方』より1


 最近ではあまり見なくなったマンガ独特の表現の紹介。この辺はそろそろ一周回って逆に新しくなってる気もします。
『手塚治虫のマンガの描き方』より2

 『どんなに大きく描いてもよい』とか『これもなるたけ大きく』とこっそりユーモアが混ぜられているのも面白い。
『手塚治虫のマンガの描き方』より3



 他にも、下記の引用部分は雑学として有名ですが、その本人の言質ということで一次資料となると思います。
 おなじみ鉄腕アトムの頭の両方に、ピンと立ったもの、あれをツノだという人がある。
 あれは髪の毛なのです。
 あれは実はぼくがモデルなのだ。ぼくが若く、まだ髪の毛が天然パーマだったころ、風呂から上がると、モヤモヤと髪の毛がおっ立って困った。
 鏡で見ると、両側が犬の耳みたいにさか立っていた。こいつを使おうとばかり、アトムの毛にしてしまった。

電気スタンドは蛍光灯にかぎる。ふつうの電灯では、彩色するときに、黄色が濃く見えたり、ほかの色も違って見えてしまう。ぼくはこれで大失敗したことがある。ライオンを電灯の下で黄色く塗ったつもりが、翌朝見たらまっ白だったわけ。

「音でない音」を描くこともある。音ひとつしない場面に「シーン」と描くのは、実はなにをかくそう、ぼくがはじめたものだ。


 他にも興味深い箇所がたくさんありますが、引用ばかりになってしまうのでこれで控えておきます。

 4コマ漫画の起承転結については反論を書こうと思いましたが、自分には反論できそうもないのでやめておきます。 いしいひさいち先生は『4コマ漫画に起承転結というセオリーは存在しない。』と言っていましたが、自分も同じ考えです。