『真説 金田一耕助』(横溝正史)を読了。




■エッセイ集です
 金田一耕助シリーズの作者、横溝正史のエッセイ集です。
 このエッセイは毎日新聞の日曜日の特集版にて昭和51年(1976年)9月から1年間にわたって連載されたものだそうです。
 ちょうど市川崑監督の映画『犬神家の一族』が公開されたころなので、たぶんそれの宣伝も兼ねて連載を始めたのだと思います。

■和田誠の表紙は電子版にはない
 星新一作品の挿絵でも有名な和田誠が表紙を描いています。
 しかし、電子書籍版の方は、去年(2014年)の10月ごろから表紙がなくなってしまいました。
 角川文庫の他の電子版からも一斉になくなっているので、おそらく何かあったのだと思います。


■トリビア風に
 エッセイは雑学の宝庫でもあるので、メモしたものをトリビア風にしてみました。全部で16個です。

 ・横溝正史の「正史」の読み方は、本名ではマサシ、筆名ではセイシと読む。当初は筆名もマサシだったが、作家仲間からセイシと誤読されるうちにそれを筆名とすることにした。

 ・多くの俳優が金田一耕助を演じているが、高倉健も金田一耕助を演じたことがある。

 ・「金田一耕助さんを絶対に結婚させないでほしい」「私を耕助さんのお嫁さんにしてください」といったファンレターをもらい、金田一耕助が女性にモテることを初めて知る。

 ・1976年公開の映画『犬神家の一族』には原作者の横溝正史が旅館の主人役で出演している。一緒にいるのは横溝正史の奥さん。

 ・映画『犬神家の一族』(1976年版)で原作者の興味をひいた場面がある。それは最後に金田一耕助が報酬を受け取っているところ。原作にはそのような場面はないが、原作者は金田一耕助の収入についてあまり考えたことがなかったらしい。

 ・金田一耕助の収入を調査してみると、タダ働きとなっているのがいくつかある。

 ・原作者が選ぶ金田一耕助ものベスト10。(1)獄門島、(2)本陣殺人事件、(3)犬神家の一族、(4)悪魔の手毬唄、(5)八つ墓村、(6)悪魔が来たりて笛を吹く、(7)仮面舞踏会、(8)三つ首塔、(9)女王蜂、(10)夜歩く

 ・金田一耕助のモデルは三人。菊田一夫氏、城昌幸、そして原作者自身。

 ・よく遊びに来ていた学生から母校に伝わる琴の音が鳴り響くという怪談を聞き、『本陣殺人事件』で琴を使うことを思いつく。

 ・ファンからバレンタイン・デーのチョコをもらい食べるが、ほどなくして青酸チョコ事件が報道され恐怖する。

 ・横溝正史が好きなプロ野球チームは近鉄。

 ・『本陣殺人事件』の連載中に長編の『蝶々殺人事件』も並行して書いている。これは小栗虫太郎が急逝して雑誌に穴があきそうになったのをピンチヒッターとして書いたもの。かつて横溝正史が大喀血し執筆不可能となった際、小栗虫太郎がピンチヒッターを務めてくれたという恩があった。

 ・『本陣殺人事件』と『蝶々殺人事件』が映画化された際、題名がそれぞれ『三本指の男』と『蝶々失踪事件』に改題された。これはGHQの指導によるもので、小説の題名として殺人という言葉は許されても、大衆的な映画の題名としては穏やかではないという見解だったらしい。

 ・『獄門島』の犯人は横溝正史の奥さんが思いついたもの。人物の配置や事件が大体きまったところで、奥さんに話をしたところ、「犯人はその○○なのね」と言ったことがきっかけとなる。

 ・『八つ墓村』のモデルになった「津山事件」。事件発生当時、横溝正史は信州上諏訪で療養していたが、事件の報道を一切聞かなかった。事件を知ったのは十年以上経ってから。事件があったのは日華事変の翌年ということもあり、人心の動揺を恐れて報道が自粛されていたのだ。

 ・津山事件があったのは津山市ではなく、津山市から三十キロは離れた村。
  (※現在は津山市に吸収合併されている)



 金田一耕助の報酬に関しては目から鱗でした。調べてみるとタダ働きしている探偵は多いかもしれません。「無料で推理してくれる探偵リスト」なんてのが出回らなければ良いのですが。