kindleで『時計仕掛けのりんご』(手塚治虫)をセールとしていたので購入。
 面白いので一気に読んでしまいました。

時計仕掛けのりんご
手塚治虫
手塚プロダクション
2014-04-25



 大人向けの短編が8本収録されています。収録タイトルは以下の通り。

 『処刑は3時におわった』
 『聖女懐妊』
 『時計仕掛けのりんご』
 『バイパスの夜』
 『嚢』
 『イエロー・ダスト』
 『悪魔の開幕』
 『帰還者』

「時計仕掛けのりんご」より


 さて、上の画像は表題作の『時計仕掛けのりんご』の中の一コマです。
 今回購入した手塚プロダクション発行の電子書籍版ではちゃんと“朝日新聞”になってました。
 他の出版社のものでは“毎朝新聞”と変更されているものがあるそうです。
 セリフが改変されているケースがたまに話題になりますが、あれは出版社側がやっていたのかなぁと思ったりします。
 (ちなみに画像はKindle Paperwhiteの画面を直接撮影したものです)


 以下感想ですがネタバレ注意。

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『処刑は3時におわった』
 この薬を死刑囚以外への拷問に使ったらどうだろうと思ったが、それはよくよく考えて見ると、世にも奇妙な物語の『懲役30日』だと気付いた。
 オチを知ってからもう一度読み返してみると、下のコマで確かにそうなだと思う。
 「処刑は3時におわった」より

『聖女懐妊』
 アンドロイドが子供を身ごもったと言い出すお話。 悲しい愛の物語。
 そういえば『機械仕掛けの愛』(業田良家)はこういう系統だなと思った。

『時計仕掛けのりんご』
 町が外界と完全に隔離されてしまい、何やら恐ろしい計画が実行されているという話。
 テレビもラジオも途絶えてしまい、情報源は朝日新聞のみ。そして「へんね 朝日新聞がうそをのせるはずがないわ」(上の画像)には笑ってしまった。

『バイパスの夜』
 無礼な話をするタクシーの乗客。それに負けじと恐ろしい話をする運転手。二人の話は本当か嘘か分からないものの、二人は確実に恐怖体験することとなるというオチ。

『嚢』
 ブラックジャックを読んでるとオチはすぐに察しがつくかもしれない。
 初出が昭和43年(1968年)なので、こちらの方がピノコより先。

『イエロー・ダスト』
 子供達が食べたレーションは実は……という話。
 ベトナム戦争ではアメリカの兵士達に覚せい剤を処方していたという話を思い出した。

『悪魔の開幕』
 総理大臣暗殺しようとするスパイアクション映画みたいな話。しかし暗殺者の主人公が冴えない電気技師というのが変わっている。最後で二転三転するところは本当にスパイアクション映画を彷彿させる。
 最後の方で「ぼくは町で、先生と特殊警察庁長官が笑いながら話し合っているところを見てしまったんです」というセリフがあったので、もしや序盤にそういうシーンがあるのかなと読み返してみたが、そういうシーンは見つからなかった。

『帰還者』
 男たちを干からびせて行く姿には、映画の『スペースバンパイア』や『スピーシーズ』を思い起こした。初出は昭和48年(1973年)なので2つの映画よりこの作品の方がずっと前だ。
 最後で夢オチだと明かされたところで「ばかやろ!! 読者をばかにしやがって!!」と思わずにはいられなかったが、そのあとに地球人達が読者の気持ちを代弁するかのように宇宙人をボコボコにしている様には笑ってしまった。