『予想どおりに不合理』(ダン・アリエリー)を読了。




■行動経済学の本です
 『予想どおりに不合理』は“行動経済学”の研究を紹介した書籍です。
 行動経済学とは何か? 簡単に言うと経済学に心理学を取り込んだようなものです。どうやら従来の経済学は人間は合理的に行動すると考えていたようです。しかし実際の人間は合理的ではありません。不合理です。そして不合理ではあるものの、その行動はある程度予想できたりします。その予想できる行動を研究したのが行動経済学のようです。
 つまり題名の『予想どおりに不合理』というわけです。

■著者がNHK教育に出演していたから
 行動経済学の本は数あれど、なぜ多くの中からこの本を選んだかというと、著者のダン・アリエリー教授がEテレ(旧NHK教育)の『白熱教室』で講義をしていたからです。
 この『白熱教室』を見て行動経済学に興味を持ったので、その番組で講義をしていた人の本を選ぶというありふれた行動ですね。

■著者はイグ・ノーベル賞受賞者
 ダン・アリエリー教授は2008年のイグ・ノーベル賞(ノーベル賞のパロディ)を受賞しています。
 受賞した実験というのが『高価な偽薬(プラセボ)は安価な偽薬よりも効力が高い』というもの。
 一見ふざけた実験に思えますが、これがジェネリック医薬品のこととなると、あながち馬鹿にできない実験ではないでしょうか。

■予測によって味覚が変わる実験
 実験を1つ紹介。
 この実験は2種類のビールを試飲してもらい、良かったと思う方を選んでもらうというもの。
 2種類のビールの一方は普通の市販のビール。もう一方は市販のビールにバルサミコ酢を2滴垂らしたもの(通称MITブリュー)です。
 そして、酢について何も知らせなかった場合と、事前に知らせた場合とでどのように結果が変わるかを調べます。
 さて実験の結果はというと、酢について知らせなかったグループはバルサミコ酢入りのビールを選んだそうです。意外と評判が良かったようです。
 しかし、事前に酢が入っていることを知らせたグループでは全く別の反応で、混ぜものをしているビールを少し味見したとたん鼻にしわをよせ、普通のビールの方を求めたといいます。
 この実験から分かることは、人は事前に与えられた情報から味を予測し、予測によって味が変化してしまうということです。

■ペプシチャレンジ
 前述の実験と似たようなことをペプシ社とコカ・コーラ社がテレビCMで行っています(日本ではペプシのみ)。
 どちらのCMもペプシとコカ・コーラを試飲してどちらが好みか選ぶというものでしたが、ペプシ社のCMではペプシを選ぶ人が多く、逆にコカ・コーラ社のCMではコカ・コーラを選ぶ人が多かったそうです。
 さて、この2社は統計を誤魔化したのだろうか?
 その答えは両者の調査の仕方の違いによるもので、前述の実験のように、事前に与える情報によって結果が変わっていたとのこと。
 ペプシのCMではブランド名を伏せて飲み比べをしたのに対し、コカ・コーラのCMではどちらのコーラか分かった状態で試飲していたそうです。
 このCMの逸話から分かることは、ブランド名は意外にも味覚に作用するということです。


 他にも面白い実験がたくさん紹介されていますが、ここで取り上げるのはこれぐらいにしておきます。